精神科学教室 活動報告

平成24年度 医学生、研修医等をサポートするための会

2012.10.21

 本会は、医学生や研修医の時期から男女共同参画やワークライフバランスについて理解し、医師が安心して医療を提供できる、すなわち健全な労働力を維持するためにはどのようなことが大切かといった内容の会である。

 なお、本会は日本医師会女性医師支援センター(厚生労働省委託事業)における事業の一環として、平成18年度から開催されている「女子医学生、研修医等をサポートするための会」に始まり、平成23年度からは「医学生、研修医等をサポートするための会」と名称を変更して、毎年、全国で約50団体が開催している。

 東京都医師会では次世代医師育成委員会が本会を主催し、本年度は10月20日(土)に順天堂大学本郷キャンパスで開催された。定員100名の会場は満席で、演者の先生方の多くが持ち時間をオーバーするなど大盛況であった。私も昨年に引き続き、僭越ながら若手医師一人ひとりが、やりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすためにはどうするかといった内容をお話しした。

 この会を通じて、女性医師が出産・育児といったライフサイクルの中で、いかにして就業を継続していくか、さらにはこれまで当たり前と思っていた膨大な労働時間をはじめとした医師の勤務環境の問題点などを意識するようになったのだが、私の場合なぜだか「うつ病患者の復職」、「統合失調症患者の就労」といったことを、より意識する方向に行ってしまった。

東京都医師会次世代医師育成委員 赤羽晃寿

医学生、研修医サポートの会.pdf                                                                           

SCIT研修会に参加しました。

2012.10.15

10月6日、7日に、都内でSCIT研修会が行なわれ、池淵教授、デイケアスタッフと一緒に参加してきました。

 SCIT(Social Cognition and Interaction Training)は、統合失調症の社会認知や対人関係の改善をターゲットにした新しいリハビリテーションプログラムです。統合失調症の患者さんの社会機能の改善には、記憶・注意力など神経心理学的な認知機能の改善(現在デイケアで行なっている認知機能リハビリテーションはこちらです)とともに、社会認知(=他者の意図や感情を理解する能力を含む、社会的なコミュニケーションの基盤となる精神活動)も注目されています。SCITは、もとはアメリカで開発されたものですが、すでに日本語版も出来上がっています。

 研修会では、国立精神神経センターの中込和幸先生、菊池安希子先生による講義の後に、スライドに映された人の表情からその人の感情を推測する訓練や、原因帰属様式や結論への飛躍など統合失調症の人の適応を妨げる考え方の修正を図る介入法などが紹介されました。

 例えば、原因帰属様式に関しては・・

 「今日、先輩に挨拶したら返事が返ってこなかった」という出来事に、どんな考えが浮かびますか?

例1:”周囲の雑音で聞こえなかったのかな”

   ”先輩は何か考え事でもしてたのかな” 

⇒<お気楽型> 原因を状況に求める外的状況的原因帰属様式

 

例2:”私は先輩に嫌われているんだ・・”

⇒<自責型> 自分のせいにする内的人的原因帰属様式

 

例3:”返事をしないなんて礼儀知らずな人だ”     

⇒<攻撃型> 他人のせいにする外的人的原因帰属様式

 

それぞれの考えの結果、どんな気持ちになって、行動はどうなるでしょう・・

それぞれに、どんな長所と短所があるでしょう・・

など、集団で考えてもらったりします。

 

 また、結論の飛躍に関しては、統合失調症の人は、一般の健常人よりも少ない手がかりで、強く確信しやすい傾向があって、こういった傾向が妄想や社会的な問題と繋がりやすいので、それに気づき修正を図る介入もありました。

 SCITにはまだ他にも色々なセッションがあるようですが、研修の後半では、セッションの一部について、各施設からの参加者がグループ分けされ、リーダー、コリーダー、患者役、評価役など役割分担しロールプレイによる実践練習をしました。

 他人の意図や感情を汲むのが苦手でストレスや症状悪化を招きやすい患者さんなどにプログラムを使えたらもちろんいいいですし、日常の面接やSSTなどですぐにでも使えそうな部分もあったりで、これを機会に治療の幅が広がればと感じました。研修に参加して、社会認知に対する介入を実戦形式で学べたことは有意義でしたし、なにより、リハビリテーションプログラムというのは患者さんに楽しんで訓練してもらうのが一番だと思うのですが、日々そうした実践者による研修会のためか、面白く学べたのもよかったです。

                                       渡邊由香子

 

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