主任教授挨拶

 大学病院のミッションは、医学の進歩にキャッチアップし、訪れる患者さんに対して最新でベストの治療を行うこと、同時に学生や研修医の教育を行い、良き臨床医を育てること、さらに常に探求心をもって病気の本態と向き合い、新たな診断や治療法の開発をめざ すことにあります。この臨床―教育―研究という3本の柱はそれぞれが独立に存在するのではなく、互いに高め合うものです。
 当科はうつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害、ストレス障害、摂食障害、睡眠障害、神経発達症、認知症など幅広い心の病気でお悩みの患者さんの治療を行っています。症状の重い患者さん、家庭では治療が難しい患者さんや迅速な対応を必要とする患者さんなどには開放的な環境での入院治療を行います。入院治療によって、画像診断、脳波検査、心理検査などの詳細な医学情報を得るとともに、ストレスから解放された生活を送って頂き、同時に細かい薬物調整を行います。心の病気の入院治療では、医学面の評価だけでなく、これまでの人生を振り返る機会にもなるでしょう。入院治療では、薬物で改善されない方などに対して効果が高い通電療法も行っています。通電療法は数秒間の脳への通電ですが、手術室で麻酔をかけて安全に行います。
 外来では薬物療法を中心に行っています。学会のガイドラインに準じた標準的治療を心がけ、お薬は必要最小限にするように配慮しています。また、一部の患者さんに対しては栄養学的治療や時間をかけた心理療法も行っています。専門外来として、「物忘れ外来」と「児童・思春期メンタルヘルス外来」があります。

<地域の医師の先生方へのメッセージ>

 当院は大学病院ですので、地域のクリニックの先生方との連携を強化していきたいと考えております。入院が必要、あるいは必要かもしれないという段階でも結構ですので、積極的にご紹介頂ければ幸です。入院治療にて軽快後は原則的に紹介して頂いた先生に逆紹介致します。また、当院にて詳しい画像検査(MRI、SPECT、DATスキャンなど)や心理検査を行った後に、そのデータを地域の先生に情報提供することも可能です。是非、ご活用をご検討下さい。

<当教室での研修・研究に興味のある先生へ>

 当教室では、最先端の合理的で丁寧な臨床を身につけたい方、新しい診断や治療につながる研究を行ってみたい方に積極的に門戸を開放しています。もちろん、そう大上段にふりかざさなくとも、「東京の大学病院で少し学んでみたい」といった動機でも結構です。当教室では専門医の資格の取得などに必要な十分な症例数を経験できます。なお、当教室では出身大学を問わず、幅広く受けて入れています。
 医師としての人生は50年以上になるのが普通です。若い時に、じっくりと症例に取り組み、科学的な考え方を身につけること、それが医師としての土台を作り、医師という職業の面白さや「やり甲斐」につながっていきます。また、これからは、一般の精神科専門医だけなく、さらなる専門領域をもつことも必要です。児童・思春期精神医学、睡眠学、老年期精神医学、リエゾン精神医学、精神療法、緩和ケアなど、より専門性の高い領域を修得するのもいいでしょう。
 医学の研修ではこうした科学的知識や技術を身につけることが大切であることは言うまでもありませんが、臨床、とりわけ精神科の臨床で大切なことは、患者さんに温かい心で接するということだと思っています。そして、症状をみてマニュアルに従って薬を処方するのではなく、「生き方」やライフスタイルをみて、適切な介入ができる能力を身に着けることを重視します。
 初期研修医や現在他科で勤務・研修をされている方々の見学を歓迎致します。大学院への入学希望者、助教などの常勤ポストに興味がある方も随時、ご相談ください。

 帝京大学医学部精神神経科学講座
 主任教授 功刀 浩(くぬぎ ひろし) 

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