精神科学教室 活動報告
第22回日本緩和医療学会学術大会参加記
2017.06.26
平成29年6月23・24日の2日間、パシフィコ横浜にて第22回日本緩和医療学会学術大会が開催された。当学緩和医療学講座の有賀教授が大会長を務めるため、年初から参加を目標にしていた。緩和医療関連の学会は一昨年サイコオンコロジー学会に参加して以来だが、本学会の方が無論はるかに規模も大きく、参加者も多い(8000人規模とか)。看護師、心理士、薬剤師、理学療法士など、医師以外の参加者の方が多いと思われ、雰囲気も学際的なのは日頃の他職種チームでの業務内容をそのまま反映していた。精神科関連のプログラムも豊富なだけでなく、緩和医療の概論的な話まで含めて、最新の知見を踏まえた上で第一人者の先生方から聞くことができ、非常に充実していた。以下、分野毎に聞いた内容をまとめておく。
緩和医療の概論的な話
講演 Dr. Moody「Palliative and end-of-life care for all: transforming care in Japan from exclusive care to inclusive care」
講演 Dr. Bruera「Integration of palliative care」
インターナショナルジョイントシンポジウム「IJSY2017-Integration」
PALランチョンセミナー 志真泰夫先生「緩和ケアを歴史から紐解く」
教科書にも書いてあるような基本的なところから、現在直面している問題まで、丁寧に勉強することができた。非がんの緩和ケア、がん治療と緩和医療の統合などは決して日本だけに限らない問題であることを知った。PALというのは患者アドボケイト・ラウンジといって、患者家族参画プログラムのこと。今年初の取り組みということであったが、実はこのセミナーが本学会で最も印象に残った。緩和ケアの歴史を裏話も含めて面白く紹介して頂いただけでなく、「現在の日本の緩和医療は青年期。皆アイデンティティを求めて学会に来ているから、『それでいいんだよ』と言ってやって下さい」と患者さんに語りかけたり、「隠れ仏教徒になりたい」と自らのお母さんのがん治療を紹介しながら心情を語って頂いたりと、心に訴えかけてくるところが大きかった。患者さんと一緒に聞いていたのも、他のプログラムとは全く異なる効果があったように感じた。
精神科関連の話
講演 上村恵一先生「がん患者の精神症状はこう診る、向精神薬はこう使う」
シンポジウム「エビデンスにもとづいたせん妄ケア:JASCC・JPOSガイドライングループから」
シンポジウム「コミュニケーションスキルをどう現場に活かすか」
シンポジウム「マインドフルネスを緩和医療に活かす」
ランチョンセミナー 小川朝生先生「認知症を持つがん患者のケア」
精神科関連分野について一通り最新知見を得て、知識を整理するのに役立った。がん患者のせん妄に特化したガイドラインはまだないこと、オピオイドローテーションは一定程度せん妄の改善に効果があること、がん患者の自殺対策が大きな問題と認識されていることなど、改めて確認できたことも色々あった。マインドフルネスを医療者や医学生のセルフケアに使う試みの紹介は新鮮だったし、認知症の話は明日からの当科の診療の展開にそのまま役立つ話が満載であった。
その他
大会長講演 有賀先生「私が緩和ケア医である理由」
講演 Dr. Mullan「がんサバイバーシップの原点を語る」
この分野は意外と自分や自分の家族ががん、という人が多いのかな、と思った。
2日間、一聴衆として思う存分勉強させて頂けたことを、有賀先生をはじめとする緩和医療学講座のスタッフの方々にこの場を借りてお礼申し上げたい。
栃木 衛