精神科学教室 活動報告
SCIT研修会に参加しました。
2012.10.15
10月6日、7日に、都内でSCIT研修会が行なわれ、池淵教授、デイケアスタッフと一緒に参加してきました。
SCIT(Social Cognition and Interaction Training)は、統合失調症の社会認知や対人関係の改善をターゲットにした新しいリハビリテーションプログラムです。統合失調症の患者さんの社会機能の改善には、記憶・注意力など神経心理学的な認知機能の改善(現在デイケアで行なっている認知機能リハビリテーションはこちらです)とともに、社会認知(=他者の意図や感情を理解する能力を含む、社会的なコミュニケーションの基盤となる精神活動)も注目されています。SCITは、もとはアメリカで開発されたものですが、すでに日本語版も出来上がっています。
研修会では、国立精神神経センターの中込和幸先生、菊池安希子先生による講義の後に、スライドに映された人の表情からその人の感情を推測する訓練や、原因帰属様式や結論への飛躍など統合失調症の人の適応を妨げる考え方の修正を図る介入法などが紹介されました。
例えば、原因帰属様式に関しては・・
「今日、先輩に挨拶したら返事が返ってこなかった」という出来事に、どんな考えが浮かびますか?
例1:”周囲の雑音で聞こえなかったのかな”
”先輩は何か考え事でもしてたのかな”
⇒<お気楽型> 原因を状況に求める外的状況的原因帰属様式
例2:”私は先輩に嫌われているんだ・・”
⇒<自責型> 自分のせいにする内的人的原因帰属様式
例3:”返事をしないなんて礼儀知らずな人だ”
⇒<攻撃型> 他人のせいにする外的人的原因帰属様式
それぞれの考えの結果、どんな気持ちになって、行動はどうなるでしょう・・
それぞれに、どんな長所と短所があるでしょう・・
など、集団で考えてもらったりします。
また、結論の飛躍に関しては、統合失調症の人は、一般の健常人よりも少ない手がかりで、強く確信しやすい傾向があって、こういった傾向が妄想や社会的な問題と繋がりやすいので、それに気づき修正を図る介入もありました。
SCITにはまだ他にも色々なセッションがあるようですが、研修の後半では、セッションの一部について、各施設からの参加者がグループ分けされ、リーダー、コリーダー、患者役、評価役など役割分担しロールプレイによる実践練習をしました。
他人の意図や感情を汲むのが苦手でストレスや症状悪化を招きやすい患者さんなどにプログラムを使えたらもちろんいいいですし、日常の面接やSSTなどですぐにでも使えそうな部分もあったりで、これを機会に治療の幅が広がればと感じました。研修に参加して、社会認知に対する介入を実戦形式で学べたことは有意義でしたし、なにより、リハビリテーションプログラムというのは患者さんに楽しんで訓練してもらうのが一番だと思うのですが、日々そうした実践者による研修会のためか、面白く学べたのもよかったです。
渡邊由香子