精神科学教室 主任教授
「我が国の統合失調治療の課題と治療の質の向上を目指した取り組み:特効性注射剤(LAI)の適正使用を軸として」 臨床精神薬理 第18巻6号 2015年6月
2015.06.30
西園昌久先生、丹羽真一先生、安西信雄先生、後藤雅博先生、野中猛先生と共同研究してきた研究が「臨床精神薬理」(星和書店)に載りました。下記の抄録をご覧ください。関心をお持ちの方は是非ご一読下さい。
総説 特効性注射剤のベネフィットとリスク
我が国の統合失調治療の課題と治療の質の向上を目指した
取り組み:特効性注射剤(LAI)の適正使用を軸として
抄録:統合失調症の再発予防に関して、経口剤に比べ持効性注射剤(LAI)の優位性は先行研究が示すところであるが、患者の社会復帰を支える選択肢の1つとしてLAIは十分に認識されていない。この背景には、LAI治療への偏見も挙げられるが、医師と患者の治療同盟を目指す関わりが不十分であることが最大の要因と考えられる。つまり,shared decision makingを介したLAI導入時の患者家族教育の実施をはじめ、その先の治療ゴールの明確化や共有化が医師と患者の関係の中で十分に行われていないと考えられることである。したがって、回復モデルが唱えるような患者への支援を実現するためには、医師が患者との関係性を改めて見直し、必要な支援を行うスタンスを確立することが必要であろう。これらは、LAI治療と統合失調症治療の共通な根底の課題であり、PPST研究会は医師と患者の治療同盟の強化が図れるように活動を継続している。
臨床精神薬理 18:757-765,2015
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