精神科学教室 主任教授
「統合失調症の社会機能をどのように測定するか」精神神経学雑誌 第115巻第6号(2013)570-585
2013.06.25
下記の抄録をご覧ください。関心をお持ちの方は是非ご一読下さい。
精神神経学雑誌 第115巻第6号(2013)570-585
説総
統合失調症の社会機能をどのように測定するか
池淵恵美
精神障害をもつ人があたり前に地域で暮らすことは重要な治療目標であるために、社会生活能力の評価は重要である。また神経・社会機能の重要性が注目され、脳機能の解明や、改善のための介入研究のアウトカムとしての社会機能の評価が重要視されるようになっている.本論では社会機能を評価する上での視座を明確にし、現状でよく使用されている社会機能の評価尺度を簡潔に紹介し、開発が望まれる評価方法について論じ、臨床場面や研究において社会機能の評価をどう行っていくことができるかを紹介している。測定ツールを分類する基軸としては、行う能力・実世界での行動、主観的評価・客観的評価、評定・行動測定などがある。実世界での行動を評価する尺度として、NIMH一MATRICSのプロセスと並行して6つの尺度が選定されており、それぞれの特徴について概説した。ほとんどの測定方法は、情報提供者への面接に基づく客観評価である。診察室などの場でパフォーマンスを求めてその評価を行うのが「行う能力」であるが、行う能力の評価のうち、課題遂行能力については広く用いられている尺度が存在するが、対人スキルや社会的問題解決能力についてはそうした尺度はまだ存在しない。生活環境、年齢や性別やおかれている文化によって、取るべき対人行動が大きく異なることがその原因の1つであろう。診察室で測定できる脳機能と、行う能力や実世界での行動をつなく゛変数として、内発的動機づけ、 メタ認知、自己効力感、得られる支援やおかれている環境などがあり、相互の関連性が低くなる要因と考えられる、臨床でアセスメントを行うには、狭義の社会機能だけではなく、 こうした介在変数や、希望や支援のニーズなどの主観的評価、 もともとの機能や障害の影響を知る上での生活歴が必要であり、評価尺度だけでは不十分である。介入研究の効果測定には客観的行動評定の尺度などが有用である。
受理日:2013年3月2日